大阪高等裁判所 昭和61年(ネ)2029号 判決 1988年4月14日
第二〇二九号事件控訴人・第二〇三三号事件被控訴人(原告)
富田裕子
第二〇三三号事件控訴人 第二〇二九号事件被控訴人(被告)
岸田修二
主文
一 第一審被告の控訴に基づき、原判決を次のとおり変更する。
1 第一審被告は第一審原告に対し、五〇七万〇四〇二円及びうち四六七万〇四〇二円に対する昭和五八年四月七日から支払いずみまで年五分の割合による金員を支払え。
2 第一審原告のその余の請求を棄却する。
二 第一審原告の控訴を棄却する。
三 訴訟費用は第一、二審を通じて五分し、その一を第一審被告の、その余を第一審原告の各負担とする。
四 この判決の第一項の1は、仮に執行することができる。
事実
第一申立
(第二〇二九号事件)
一 第一審原告
1 原判決中第一審原告敗訴部分を取り消す。
2 第一審被告は第一審原告に対し、二五七五万六八八六円及びうち二三三五万六八八六円に対する昭和五八年四月七日から支払いずみまで年五分の割合による金員を支払え。
3 訴訟費用は第一、二審とも第一審被告の負担とする。
4 仮執行の宣言
二 第一審被告
1 第一審原告の控訴を棄却する。
2 控訴費用は第一審原告の負担とする。
(第二〇三三号事件)
一 第一審被告
1 原判決中第一審被告敗訴部分を取り消す。
2 右部分につき、第一審原告の請求を棄却する。
3 訴訟費用は第一、二審とも第一審原告の負担とする。
二 第一審原告
1 第一審被告の控訴を棄却する。
2 控訴費用は第一審被告の負担とする。
第二主張
当事者双方の主張は、原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する。
第三証拠
本件記録中の原審及び当審の証拠関係目録記載のとおりであるから、これを引用する。
理由
一 本件事故の発生及び第一審被告の責任
本件事故の発生及び第一審被告の責任に関する当裁判所の認定、判断は、原判決理由説示第一(一〇枚目裏二行目から一一枚目表一二行目まで)と同一であるから、これを引用する。
二 第一審原告の症状
1 前掲甲第四、第五号証、乙第一号証の七、成立に争いのない甲第七号証の一、第一二号証、乙第二号証の一、二、第三号証の一ないし三、第四号証、弁論の全趣旨により真正に成立したと認められる甲第八号証、第一一号証、原審証人吉田研二郎の証言、原審鑑定人大石昇平の鑑定の結果及び原審証人大石昇平の証言(以下これらを併せて「大石鑑定」という。)、当審鑑定人土井照夫の鑑定の結果(以下「土井鑑定」という。)、原審及び当審の第一審原告本人尋問の結果、並びに弁論の全趣旨によれば、次の事実を認めることができ、この認定を覆すに足る証拠はない。
(一) 第一審原告は、昭和五八年四月七日本件事故による受傷の直後、桂寿病院で担当医師による診察を受けたが、その際左大腿部の痺れ感・脱力感、股関節部外転時の痛みを訴え、担当医師所見として左下股が硬直気味であるが関節運動に支障はないと診断され、同日一旦帰宅したあと、翌八日同病院に入院した際には、向後約一〇日間の入院加療を要するとの診断を受けたが、その後右症状に加えて頭、腰、肩各部及び左下股全体の痛みを訴え、殊に運動時における左下肢の強い痛みを訴えて歩行しなくなり、右約一〇日の期間を過ぎても症状は軽快せず、引き続き入院加療を継続することとなつたが、これらの症状は退院時まで殆ど変化はなく、退院時における診断は、左肩、胸打撲、腰部、頸部捻挫、左下肢挫傷兼軽度の神経麻痺の疑いであつた。
(二) 桂寿病院で第一審原告の主治医となつた吉田研二郎医師は、同月一二日から第一審原告の診察を行つた結果、当初第一審原告の症状を単に座骨神経を打撲したことによる痛みと運動障害であろうと診断しこれに対応する治療を施していたが、第一審原告の左下肢の痛み等愁訴の大きさからしてこれでは説明がつかず治療方針も立てられないため、同月一九日大阪市立十三市民病院の鈴木隆医師に筋電図等による検査を依頼したところ、同医師が同年六月一六日までに二回に分けてもたらした回答は、筋電図及びミエログラフイ(脊髄腔造影)による検査結果によつては、第一審原告の愁訴の大きさに対応する異状所見は認められず、もし第一審原告の愁訴が詐病又は一時的な運動障害ではないとしたならば、中枢神経に障害がある可能性も考えられるけれども、それにしては愁訴の大きさが説明できずその原因は明らかではないが、とにかく外傷に起因する障害なので保存的治療とリハビリテイシヨンを中心にせざるをえないというものであつた。
(三) 吉田医師は、右回答及び桂寿病院の脳神経外科医の診察結果をも考慮して、第一審原告に対しリハビリテイシヨン(主として歩行訓練)を指示したが、痛みの強いことを理由にこれを嫌がる第一審原告に対し、硬膜外ブロツクや局部注射を施したが、痛みの継続的除去にさしたる効果はなく、やむなく低周波照射、湿布等の保存的治療のみを行つたものの殆ど効果はなく、運動不足に起因した左下肢筋萎縮の症状があらわれるに至つた。困惑した吉田医師は、第一審原告の愁訴の原因や有効な治療方法を求めて同医師が勤務する大阪市立大学医学部付属病院の橋本及び松田英雄両医師に診察と助言を乞うたところ、松田医師の診察結果は、第一審原告の愁訴する知覚障害は脊髄性のものと思われるけれども、これだけでは説明がつかず、心因性の反応も加わつているものと考えられるが、いずれにせよ一元的に説明することは困難であり、右両医師ともリハビリテイシヨンが有効な治療方法であるとの見解であつた。吉田医師の最終診断結果は、前示桂寿病院の診断結果のとおりであるが、その原因について、診察等を依頼したほかの医師の所見をも踏まえたうえ、必ずしも証拠だてていう根拠はないけれども、心因性のものである可能性があるとの見解である。
(四) 第一審原告は、同年九月二八日桂寿病院を退院し、同年一〇月七日協立温泉病院で診察を受けたあと、同月二五日から同年一二月二〇日までリハビリテイシヨン(殊にアクテイブ・エクササイズ)を目的として同病院に入院したが、その際も左下肢のつつぱり痛、左足背の痺れ感、体動時の強度痛、重みがかかつた際の左膝痛等を訴えた。同病院の主治医は左坐骨神経損傷と診断したが、第一審原告を診察した同病院の医師の一人は心因性のものではないかとの疑問を抱いた。同病院では、第一審原告の入院期間中歩行訓練を含むアクテイブ・エクササイズを中心に治療を行わんとしたが、結果的に見るならば、第一審原告は松葉杖を使用して歩行することができるようになつたけれども、痛みが主たる原因で同病院の要求したカリキユラムを消化せず、症状自体はさして軽快しないまま、同年一二月一五日症状固定の診断を受けた。第一審原告の症状固定時における後遺障害としては、左下肢の筋萎縮が著しく痺れと疼痛があり、殊に体動時の痛みが強く、左下肢の筋力は失つていないが強い痛みのため松葉杖を使用しなければ歩行困難であり、就床時左下側臥位でしか安定せず、右下側臥位・仰臥位では左下肢等に痺れと痛みが生じ、そのため性行為もままならないという状況であり、この状態は今日まで殆ど変化はない。
(五) 第一審原告は昭和五九年三月八日自賠責保険後遺障害の認定を受けることを目的として、大阪府立病院の浜田博朗医師の診察を受けたが、同医師は、第一審原告の傷病を左下肢不全麻痺と診断したうえ、単なる坐骨神経の麻痺ではないとの消極的結論に達したけれども、さりとてその原因がなんであるかについては懐疑的であり、強いて推論するならば、本件事故による受傷のため胸髄偏側に血行障害が起こり、それが左側の脊髄麻痺を惹起して左下肢の不全麻痺となつた胸髄レベルで障害された脊髄損傷であるとの見解であつた。
(六) 大石鑑定は、第一審原告の症状を左下肢不全麻痺及び坐骨神経痛としたうえ、その原因について、考えられる傷病を詐病を含めて検討した結果、いずれも第一審原告の症状と整合性を持たないことから、一般的に下肢の疼痛を伴つた跛行の原因として考えられるカウザルギー(causalgia灼熱痛)の考え方を導入しては如何かと鑑定し、その積極的根拠として第一審原告の症状に左下肢の浮腫、患肢下垂時の足の皮膚のチアノーゼ様変色・冷感が存在すること、第一審原告の腰部から左下肢への放散痛を裏付ける臨床所見が存在することなどを挙げており、右結果到達の思考過程として、「その原因に困りに困つて、カウザルギーというものを考えたらどうかという疑問を投げかけたということです。」というものである。
(七) 土井鑑定は、第一審原告の症状をいわゆる外傷性腰痛症と心因反応の合併症と診断し、その原因について、第一審原告の腰痛、知覚障害、運動障害等の障害の訴えの大きさに比して他覚的に信頼しうる異状所見に乏しく難渋したが、末梢神経・脊髄の障害を示す所見は得られず、また、骨・関節に異状所見はなく、その他痛みの発生源としては、椎間板、神経、血管、靱帯、関節包、筋、筋膜等々の組織、部位が考えられるが、その確定は現代の診断技術をもつてしてもできないことが多く、その時はいわゆる「腰痛症」として一括されるが、第一審原告の場合軟部組織の異状が疼痛を惹起し、これが障害の原因となつている可能性が残るのでいわゆる「腰痛症」と判断するけれども、外傷性だけの場合、損傷組織がなんであれ日時の経過によつて初期の痛みが鎮静してくるのが普通であり、第一審原告の異常な程の激しい運動痛の訴えは理解し難く、その他第一審原告の鑑定時までの経過を通してみるならば、現在における各部位の障害の存在を想定してみても、症状が矛盾して合理的な説明をつけることができず、これは心理的要因の強いことを示している。第一審原告の障害は器質的疾患だけからは合理的な説明ができないのみならず、第一審原告の性格は転換ヒステリーの特徴を示しており、ルツクの心因障害に基づく整形外科的微候の理論を参考にして第一審原告の症状を検討するならば、<1> 運動障害の発現時期が明瞭ではない、<2> 痛みの表現は体動を伴うと過剰傾向になる、<3> 知覚鈍麻は躯幹部分ではなく正中線から左数センチの間に正常知覚の部分を残してそれより左側の鈍麻となつている、<4> 左下肢では全周にわたり同じ程度の知覚鈍麻を示し、また、中枢側から末梢側まであまり強弱がなく、随節性のパターンを無視したいわゆる円周性知覚鈍麻を示す、<5> 下肢の圧痛点は坐骨神経のみならず、筋、筋間を問わず瀰慢的に存在する、<6> 伸展下肢挙上テストは、痛みの訴えのため五度或いは二〇ないし三〇度に止まるが、挙上を押し進めると九〇度まで可能である、<7> 筋萎縮、下肢色調の変化、冷感などは、心因性としても説明可能であることからして、初期には事故に基づく挫傷、捻挫など明瞭な症状があつたと思われるが、その疼痛或いは不安状態から二次的に発展した心因反応ではないかと想像される、というものである。
2 以上に認定したように、第一審原告を診察・鑑定した多くの医師が第一審原告の症状を診断するに当たつて、共通して抱いた悩みは、第一審原告の左下肢疼痛を中心とする愁訴の大きさに対応する異状所見に乏しく、第一審原告の愁訴に対応する障害の存在を想定してみても、症状が矛盾して合理的な説明をつけることができないという点であり、かかる状況のもとにおいて、詐病の可能性すら考慮しつつ、各医師が苦慮を重ねながら下した結論ないし推定も区々に分かれている。
協立温泉病院での左坐骨神経損傷との診断は、土井及び大石鑑定に照らして採用するに十分なものとはいえない。
大阪府立病院の浜田医師は、胸髄レベルで障害された脊髄損傷と推論したが、前掲乙第四号証によれば、同医師自身が右推論の結果と第一審原告の症状に矛盾する点のあることを認めており、また、大石鑑定及び土井鑑定に照らしても採用するに十分なものとはいえない。
大石鑑定は、カウザルギーとの結論に到達したとはいえ、第一審原告の諸症状を検討したけれども的確な原因を見出せず、困りに困つた結果カウザルギーというものを考えたらどうかという疑問を投げかけたというものであるから、同鑑定自体確定的結論に到達したものではないし、カウザルギーの病因も病像も必ずしも明らかなものではなく、土井鑑定によれば、下肢色調の変化、冷感などは心因性のものとしても説明可能であると認められることからすれば、未だ採用するに十分のものとはいえない(なお、大石鑑定によれば、十三市民病院の鈴木医師もカウザルギーとの見解を表明したと認められるけれども、これによつても右結論を左右するに足りない)。
土井鑑定は、痛みの発生源の確定は現代の診断技術をもつてしてもできないことが多く、軟部組織の異状が疼痛を惹起し、これが障害の原因となつている可能性が残るとしていわゆる腰痛症と、心因反応の合併症との結論に到達したが、心因反応との見解は土井鑑定が初めてのものではなく、桂寿病院の吉田医師、大阪市大病院の松田医師、協立温泉病院の一医師によつて既にその可能性ないし疑いを指摘されていたものであつたが、土井鑑定はその根拠として、異状所見の不存在や症状の矛盾点等第一審原告の症状及び障害が器質的疾患のみとしては必ずしも合理的な説明をつけることができないという消極的推論に止まることなく、第一審原告の転換ヒステリー性格の存在とルツクの理論に照らした第一審原告の症状を指摘することにより、積極的に心因反応の可能性を推論しているものである。右推論の結果は右三医師の見解とも一致するし、第一審原告の転換ヒステリー性格は大石鑑定が実施したCMI健康調査によつて「領域Ⅲの神経症的」と判定されていることにも符合するところでもある。このように、第一審原告の症状及び障害を二元的に説明することは、土井鑑定だけでなく、大阪市大病院の松田医師が指摘したところであり、桂寿病院の吉田医師及び協立温泉病院の一医師の心因性の反応との見解ないし所見も、第一審原告の症状及び障害が心因性の反応のみによる一元的説明で足るという意味であるとは到底考えられない。これらを総合するならば、第一審原告の症状及び障害は、本件事故に起因した何らかの器質的疾患と心因性の反応とが、合併ないし競合して発生しているものと認定するのが相当である。大石鑑定は、フーバーズサイン(Hoover's sign、心因性運動障害の検査方法)の不存在を理由として心因反応に否定的な判断をしているけれども、フーバーズサインの不存在のみから、心因性の反応の合併ないし競合することを全面的に否定しうるとは考えられない。
そうすると、第一審原告の症状及び障害のうち、何らかの器質的疾患が本件事故と因果関係があることはもとより、心因性の反応も受傷に伴う疼痛や不安から惹起されることが稀ではないと考えられるから、本件事故と因果関係があるというべきである。しかしながら、心因性の反応の合併ないし競合によつて発生した全損害を第一審被告に負担させることは、公平の理念に照らして相当ではなく、過失相殺の規定を類推して弁護士費用を除く全損害のうち、その四分の三の限度において第一審被告に賠償責任を負担させるのが相当である。
三 第一審原告の損害
当裁判所は、第一審原告の損害は合計二〇六一万〇三一四円であると認定、判断するものであるが、その理由は、次に補正するほか、原判決理由説示第二(一一枚目裏一行目から一九枚目表九行目まで)と同一であるから、これを引用する。
1 一一枚目裏二行目の「成立に争いのない」を「前掲」と改め、三行目と一〇行目の各「結果」の次にいずれも「(原審分)」を加える。
2 一二枚目表四行目の「結果」の次に「(原審・当審分)」を加える。
3 一二枚目裏五行目の「第一四ないし一九号証」を「第一四ないし第一七号証、第一九号証」と改め、六行目冒頭の「ができる。」の次に「入院料合計二一万三四五〇円に患者負担分三割を乗じた数字。」を加え、一二行目冒頭の「時より後に生じた分」を「同年同月中より後に生じた分」と、同行の「五〇六七円」を「四七二二円」と、末行の「第三五」を「第三六」とそれぞれ改める。
4 一三枚目表七行目の「一四二万六三六四円」を「一四三万三一五九円」と改める。
5 一三枚目裏七行目冒頭から八行目の「認められる」までを「前掲」と改める。
6 一四枚目表七行目の「余地が」の次に「ない」を、九行目の「結果」の次に「(原審分)」をそれぞれ加える。
7 一四枚目裏二行目の「結果」の次に「(原審分)」を加え、八行目の「後記」を「前記(当審判決二項)」と改める。
8 一五枚目表一二行目冒頭から一八枚目裏九行目までを次のとおり改める。
「当審判決二項で認定した第一審原告の後遺障害は、その程度からして、「神経系統の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの」に準ずるものであり、自賠責等級表に定める七級四号に該当すると評価するのが相当というべきであり、第一審原告の後遺障害は心因性の反応の合併ないし競合するものであるから、経年とともに軽快することを期待するのは困難ではないから、第一審原告の後遺障害による労働能力喪失割合は、右症状固定時の年齢四四歳から就労可能な六七歳まで五六パーセントと認定するのが相当である。
そこで、以上の数値に基づいてホフマン式計算方法により年五分の割合による中間利息を控除して逸失利益の現価を算定すると一八四〇万六六五六円となる。
2,184,700×0.56×15.0451=18,406,656」
9 一九枚目表九行目の「六〇万円」を「四〇万円」と改める。
10 そうすると、第一審原告が被つた弁護士費用を除く損害は、<1> 治療費一四三万三一五九円、<2> 入院雑費一八万円、<3> 付添看護費二四万七三〇〇円、<4> 装具代一万〇七〇〇円、<5> 通院交通費一万七一九〇円、<6>休業損害一四五万六四六六円、<7> 逸失利益一八四〇万六五六円、<8> 慰謝料八七二万円、以上合計三〇四六万五四七一円となるが、当審判決二項説示のとおり、第一審被告は四分の三の限度で賠償責任を負うものであるから合計の額は二二八四万九一〇三円となる。
四 過失相殺
当裁判所は、本件事故における第一審原告の過失割合は二割であると認定、判断するものであるが、その理由は、次に補正するほか、原判決理由説示第三(一九枚目表一一行目から二〇枚目表九行目まで)と同一であるから、これを引用する。
1 一九枚目表一二行目の「結果」の次に「(原審分)」を加え、末行冒頭の「転車に乗つて」を「転車に、片手で傘を差し、片手でハンドル操作をするという不安定な状態で乗つて、」と改める。
2 一九枚目裏一二行目の「結果」の次に「(原審分)」を加え、末行の「注意を払わないまま」を「注意を払わず、しかも片手でハンドルを操作するという不安定、かつ、的確な操作のできない状態で」と改める。
3 二〇枚目表八行目の「合計損害額」を「弁護士費用を除く損害額二二八四万九一〇三円」と改める。
4 そうすると、その額は一八二七万九二八二円となり、これに弁護士費用四〇万円を加算すると一八六七万九二八二円となる。
五 損害の填補
請求原因4(原判決六枚目裏一〇行目から七枚目表二行目まで)及び抗弁1(原判決八枚目裏一一行目から九枚目表一行目まで)の各事実は当事者間に争いがないので、第一審原告は既に損害賠償の支払いとして一三六〇万八八八〇円受領していることになる。そうすると、第一審被告が第一審原告に対して賠償すべき損害額は、五〇七万〇四〇二円となる。
六 以上によれば、第一審原告の本訴請求は、不法行為に基づく損害賠償金五〇七万〇四〇二円及びうち弁護士費用を除く四六七万〇四〇二円に対する不法行為の日である昭和五八年四月七日から支払いずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で正当であるからこれを認容し、その余は失当として棄却すべきところ、これと一部結論を異にする原判決はその限度で失当である。よつて、第一審原告の控訴を棄却し、第一審被告の控訴に基づき原判決を変更することとし、訴訟費用の負担につき民訴法九六条、八九条、九二条を、仮執行の宣言につき同法一九六条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 荻田健治郎 渡部雄策 井上繁規)